国民投票で生じた国内の混乱と分裂の回復も課題だ。

対立候補のレッドソム・エネルギー担当閣外相の撤退で、9月以降に想定された就任時期は約2カ月も前倒しになった。
英政府は党首選中に離脱に向けた準備を進めるつもりだったが、その猶予期間は消えてしまった。
メイ氏は首相に内定した後も離脱通知は来年以降との主張を変えていない。
だが、EUから早期の交渉開始へ圧力が高まるのは必至。
モスコビシ欧州委員は新首相が決まったのになぜ2カ月を無駄にする必要があるのかとけん制した。
離脱交渉の戦略もはっきりしない。
来年の離脱通告と担当相の設置以外は明かして いない。
メイ氏は移民制限とEUの単一市場への参加の両方を勝ち取りたい考えだ。
だがいいとこ取りは許さないというEUの硬い姿勢を突き崩すのは簡単ではない。
2つ目の課題は党内融和だ。
メイ氏は13日夕にも首相に就任し、組閣を始める。
離脱担当相のほか、離脱で動揺する金融市場や経済の安定にあたる財務相が焦点。
キャメロン政権を支えたオズボーン氏の後任として、ハモンド外相らの実力者が取り沙汰される。
女性閣僚も増やしそうだ。
メイ氏がどこまで独自色を貫けるかは不透明だ。
党員投票による決選投票を経ずに党首となり、党全体の信任を得たとは言いがたい。
ゴーブ司法相やジョンソン・前ロンドン市長離脱派が反旗を翻すことも考えられる。
故サッチャ ー首相に続く鉄の女の再来を期待されるが、党内をまとめきれなければ離脱交渉は一段と困難になる。
国民投票で生じた国内の混乱と分裂の回復も課題だ。
投票ではロンドンVS地方に象徴される格差拡大に対する国民の不満が噴出した。